私の祖母の家に、叔父にあたる親戚が頻繁に金を借りに来ていました。叔父は事業に失敗して以来生活に困窮しており、何かあるとすぐに祖母の家に顔を出していました。祖母は情に厚い人で、毎回「これで最後だよ」と言いながら、生活費の足しになる程度の5万円や10万円を貸していました。しかし、一度も返済されたことはないと聞きました。
借金が累積していく中で、家族の間でも「もう貸すべきではない」という意見が強くなっていったそうです。それでも祖母は、親戚のよしみで断り切れずにいました。
決定的な出来事があったのは、叔父がこれまでで一番大きな金額、300万円を借りに来た時です。叔父は頭を下げて泣きながら「これがなければ、もう生きていけない」とまで言ったそうです。この時、祖母は初めてこのままでは自分たちの生活まで危うくなると覚悟を決めました。
祖母は叔父を座らせ、落ち着いた声でこう言いました。「今まで貸したお金は諦めます。でも、これ以上は一円たりとも貸すことはできません。あなた自身の問題を、他人に頼って解決するのはやめなさい。これが最後です」と、毅然とした態度で伝えたとか。
叔父は最初は激しく食い下がりましたが、祖母の目の力が変わったことに気づき、無言で立ち去ったそうです。この日を境に、叔父は一切家に現れなくなりました。祖母はその後、少し落ち込んでいましたが、「これで良かったんだ」と自分に言い聞かせ、金銭的な悩みが一つ減ったことで、家族全員が安堵したと聞きました。親戚を失うことにはなりましたが、自分たちの生活と平穏な日々を守るための、祖母の勇気ある決断だったと思います。